内閣府の調査によると、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故は依然として高い水準にあり、その主な要因は操作ミスであると報告されています。
運転に不安を感じた際には、事故のリスクを考慮して運転免許の
自主返納を検討することも重要です。
運転免許には様々な種類があり、
中には複数の免許を保有している方もいらっしゃるでしょう。
「全ての免許を返納するのではなく、一部の免許だけを残したい」
そのようなニーズに応える制度があることをご存知でしょうか?
この記事では、運転免許の一部返納と下位免許取得申請という制度について詳しく解説し、手続きの方法や注意点などをわかりやすくご紹介します。
- 運転免許の一部返納制度の概要
- 下位免許取得申請について
- メリット
- 手続き場所と受付時間
- 必要なもの
- 手続きの流れ
- 注意点

運転免許の一部返納とは?
1998年(平成10年)4月の道路交通法の改正以降、運転免許の自主返納制度が施行されています。制度が導入された背景には、加齢による身体機能や認知機能の低下などで、自主的に運転免許を返納したいという声があったからです。
第百四条の四 免許を受けた者は、その者の住所地を管轄する公安委員会に免許の取消しを申請することができる。この場合において、その者は、第八十九条第一項及び第九十条の二第一項の規定にかかわらず、併せて、当該免許が取り消された場合には他の種類の免許(取消しに係る免許の種類ごとに政令で定める種類のものに限る。)を受けたい旨の申出をすることができる。
の規定により自主返納制度を利用すれば、ドライバーの自由なタイミングで運転免許を返納できるようになりました。また、日本では高齢社会に伴って高齢ドライバーの免許制度も変化しています。更新区分によって異なりますが、運転免許の有効期限は3年または5年です。
現在は71歳以上の誕生日以降に運転免許を更新する場合、有効期限が一律3年に変更されています。さらに70歳以上で運転免許を更新する際には高齢者講習、75歳以上は認知機能検査の実施が義務づけられています。
高齢者講習では実際に運転する内容も含まれていますが、あくまでも講習なので合否判定はありません。指導員からは、運転状況に応じて適切なアドバイスが受けられます。ただし、認知機能検査は結果次第で運転免許の停止または取消しになることがあります。
運転免許の一部だけを返納できるのか
運転免許には複数の種類があるため、ドライバーによってはすべてを返納すると日々の生活に支障が出る人もいるでしょう。ここでは、自主返納制度で運転免許の一部だけを返納できるのかを解説します。
全部または一部の取消しが可能
自主返納制度では、保有している運転免許の全部または一部の取消しができます。例えば、普通自動車免許と原動機付自転車免許を保有しているドライバーが、普通自動車免許だけを返納することも可能です。
ただし、一度返納した運転免許は元に戻せないので注意が必要です。返納した後に運転免許が必要になった場合は、基本的に再度自動車学校や教習所に通って試験を受けなければなりません。そのため、運転免許を返納するときには必要か不要かを十分に検討するようにしましょう。
一部だけを返納する手続きは2種類
運転免許の一部だけを返納する手続きには、次の2種類があります。
・一部取消し申請
・一部取消しと下位免許の取得申請
運転免許を一部だけ返納する前に手続きの種類を理解し、必要なものまで取り消さないように注意しましょう。
【一部取消し申請】
保有している運転免許の一部だけを取り消す場合は、一部取消し申請の手続きが必要です。一部取消し申請は、複数保有している運転免許の一部だけを返納できる手続きになります
例えば、「普通自動車、自動二輪、は不要だけど原付免許を保有し続けたい」という場合
です。
この手続きが行えるのは、上位の免許を取得する前に下位の免許を試験等を受けて
交付されている人のみです。
いわゆるフルビット免許や原付から順に取っていた人が対象となります。
この場合、免許が取り消しになるだけなので手数料は発生しません。
取り消せる免許の上下関係は以下の通りです。
取消す免許の種類 (上位免許) |
新たに受けることができる免許の種類(下位免許) |
---|---|
大型免許 | 中型免許、準中型免許、普通免許、小型特殊免許、原付免許 |
中型免許 | 準中型免許、普通免許、小型特殊免許、原付免許 |
準中型免許 | 普通免許、小型特殊免許、原付免許 |
普通免許 | 小型特殊免許、原付免許 |
大型特殊免許 | 小型特殊免許、原付免許 |
大型二輪免許 | 普通二輪免許、小型特殊免許、原付免許 |
普通二輪免許 | 小型特殊免許、原付免許 |
大型二種免許 | 中型二種免許、普通二種免許、大型免許、中型免許、準中型免許、普通免許、小型特殊免許、原付免許 |
中型二種免許 | 普通二種免許、中型免許、準中型免許、普通免許、小型特殊免許、原付免許 |
普通二種免許 | 普通免許、小型特殊免許、原付免許 |
大型特殊二種免許 | 大型特殊免許、小型特殊免許、原付免許 |
牽引二種免許 | 牽引免許 |
ただし、運転免許の停止または取消し処分を受けている場合及び初心運転者講習の対象に
なっているかたは一部取消しを含める自主返納は申請ができません。
【一部取消しと下位免許の取得申請】
運転免許の多くは、取得すると複数の免許が付帯されています。普通自動車免許を取得すると、小型特殊自動車や原動機付自転車の運転もできます。「普通自動車免許は不要だけど原動機付自転車には乗り続けたい」という場合に必要な手続きは、一部取消しと下位免許の取得申請です。
言い換えると上位免許から取って試験が免除されたために下位免許の発行をされていない
状態を指します。
申請できる代表的な免許の種類と残せる免許の種類は、次の通りです。
普通自動車免許を保有している場合、運転免許証の種類欄には「普通」と記載されています。一部取消しと下位免許の取得申請で普通自動車免許を取り消すと、「普通」から「原付」の表記に変わります。
保有免許の一部を返納することのメリット
保有免許を一部返納すると以下のメリットがあります。
- 高齢者講習の区分が変更になり講習手数料が安くなる
- 移動手段を制限されなくて済む
高齢者講習と免許更新
75歳以上の高齢者は、保有する免許の種類と違反点数に応じて高齢者講習1時間ないし
2時間の受講が義務付けられています。
免許証の一部返納により保有する免許が自動二輪、原付、大特、小特のいずれかのみ
になると手数料が2,900円と半額以下になり講習時間も一時間短くなります。
運転免許を一部返納する方法
運転免許の一部を返納する際には手続きが必要です。ここでは、手続きできる場所や必要
なものを解説します。
手続きできる場所
運転免許の一部返納手続きは、各都道府県の運転免許センターや一部の警察署で行えます。すべての運転免許センターや警察署で手続きができるとは限らないため、事前に各都道府県警察の公式ウェブサイトをチェックしておきましょう。
※残有免許の交付の即日性は公安委員会によって扱いが異なる場合があります。
また、受付時間は場所によって異なります。例えば東京都の運転免許更新センターでは、平日の午前8時30分から午後4時30分まで受け付けています。ただし、土日や祝日、年末年始は受付していません。
手続きに必要なもの
運転免許の一部取消し手続きでは、運転免許証と交付手数料が必要です。また、何らかの事情で本人が手続きを行えない場合は、代理人による申請も可能です。
【現有運転免許】
運転免許の一部取消しでは種類欄の表記を変更する必要があるため、運転免許証を持参しましょう。手続きする場所によっては、規定に沿った写真1枚や筆記用具の持参を求められることがあります。
また、運転免許証の記載事項に変更がある場合は、住民票や健康保険証などの身分証明書類の準備が必要です。必要なものは各都道府県警察の公式ウェブサイトに記載されているため、事前に確認しておきましょう。
【手数料】
更新と同時の申請でない方で、受けていない下位の免許を受けたい場合は手数料が必要です。
手数料 2,050円(1種目を超える場合は、1種目ごとにプラス200円となります。)
【例】
注意点
- 一部の警察署では手続きができない場合があります。事前に確認しましょう。
- 運転免許証の有効期限が切れている場合は、手続きができません。
- 一部返納した場合、返納した種類の免許は再度取得する必要があります。
- 一部取り消しおよび下位免許申請は如何なる自由があっても代理人に委任することは
できません。 - 一部取消しでは運転経歴証明書は交付されません。
一部取り消しおよび下位免許申請は代理人に委任できない
運転免許証の自主返納(申請による全部取り消し)では、病気やケガによる本人の来庁が
困難である場合以下の条件に定める要件を満たせば代理人が申請することができます。
【代理人申請ができる条件】
- 運転免許証を紛失していない
- 運転免許証が汚損等がなく記載事項をすべて判読できる状態である。
- 一部取り消しや下位免許取得申請ではない。
【代理人申請できる人】
- 親族(原則として3親等以内の親族)
- 同居人(世帯単位の住民票の写しに構成員として記載されている成人)
- 申請者本人が入院、入所する関係職員等
- 成年後見人
【必要なもの】
※1申請者と代理人の関係を確認できる書類
- 同居の親族の場合‐申請者との関係が確認できる住民票(個人番号が記載されていないもの)及び代理人の身分証明書
- 同居人以外の親族の場合-申請者との関係が確認できる戸籍謄本及び代理人の身分証明書
- 同居人の場合₋申請者との関係が確認できる住民票(個人番号が記載されていないもの)及び代理人の身分証明書
- 入所中の施設等職員の場合-代理人の身分証明書(施設の身分証明書等)
- 成年後見人の場合-申請者との関係が確認できる登記事項証明書等
条件にあるように一部取り消しや下位免許取得申請は、免許が存続するため代理人による
申請はできません。
一部出来るような表現をしている記事を見かけましたがこれは誤りです。
一部取消しでは運転経歴証明書は交付されない

運転免許をすべて返納して申請すると、運転経歴証明書が交付されます。運転経歴証明書とは過去5年間の運転経歴を証明する書類で、2012年(平成24年)4月1日以降は運転免許証と同様に本人確認書類として利用できるようになりました。
運転経歴証明書を取得すると、公共交通機関や街のお店などで割引が受けられる特典が利用できます。ただし、一部の運転免許のみを取り消す場合は引き続き何らかの運転免許を保有するため、運転経歴証明書は交付されません。
各都道府県が用意している免許返納による特典は、高齢運転者支援サイトに掲載されています。運転免許をすべて返納するか迷っているドライバーは、特典内容を確認してから決めるのも選択肢のひとつです。
参考文献
運転免許の取消し申請(自主返納)の代理人申請について – 埼玉県警察
運転免許の申請取消し(一部)・下位免許の申請について/神奈川県警察
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