2014年11月GumGumは、新しい未来のテレビ「ABEMA (アベマ) 」と共同で「ABEMA」の人気オリジナル恋愛リアリティーショー『花束とオオカミちゃんには騙されない』の配信対象に「コンテクスチュアルオーバーレイ広告」の実証実験を開始することを発表した。
この「コンテクスチュアルオーバーレイ広告」はウェブマーケティングにおいて
媒体と広告主の動画広告の新たな配信方法として追い風になるだろうと筆者は、
感じている。
そこで今回は、広告事情と共に、「コンテクスチュアルオーバーレイ広告」がどのような
メリットをもたらすのか?仕組みを説明する。
現在の広告ターゲティング方式
現代においてインターネットを含めたディスプレイ広告のターゲティング方法は、
- Cookieを使った行動ターゲッティグ
- ユーザーIDを用いたターゲティング
- DMPなどのオーディエンス(属性情報)を活用したオーディエンスターゲティング
- 文脈の解析結果に基づくコンテキストターゲティング
など様々な方法がある。
Cookieを使った行動ターゲッティグ
ウェブサイトに広告を表示する時、Google AdSenseなどの広告配信事業者は、より効果的に広告を届けるために、ユーザーの興味や関心に基づいたターゲティングを行います。
そのための一般的な方法として、第三者Cookieを利用する方法があります。
これは、ユーザーがウェブサイトを閲覧する際に、広告配信システムからユーザーのブラウザに第三者Cookieという小さなデータファイルが付与され、ユーザーの行動履歴(閲覧履歴など)や属性情報が収集されるというものです。
収集された情報は、ユーザーを特定し、興味や関心に合った広告を配信するために利用されます。
例えば、ユーザーが頻繁にスポーツ用品のウェブサイトを閲覧している場合、スポーツ用品の広告が表示される可能性が高くなります。
このように、第三者Cookieを利用することで、ユーザーにとってより有用な広告を表示することが可能になります。
ユーザーIDを用いたターゲティング
ユーザーIDを用いたターゲティングは、ウェブサイトやアプリの利用者一人ひとりに固有のIDを付与し、そのIDに基づいて広告配信を行う手法です。
仕組み
- IDの付与: ユーザーがウェブサイトやアプリにログインしたり、会員登録したりする際に、固有のIDが付与されます。
- データの蓄積: ユーザーの行動履歴(閲覧ページ、購入履歴、アプリの使用状況など)や属性情報(年齢、性別、居住地など)が、IDと紐付けて蓄積されます。
- セグメントの作成: 蓄積されたデータを基に、ユーザーをグループ分け(セグメント化)します。例えば、「20代女性で、化粧品に興味があるユーザー」といったセグメントを作成できます。
- ターゲティング広告の配信: 作成したセグメントに対して、最適な広告を配信します。
メリット
- 精度の高いターゲティング: ユーザー一人ひとりの行動や属性に基づいたターゲティングができるため、より relevant な広告を配信できます。
- パーソナライズ化: ユーザーの興味や関心に合わせた広告を配信することで、ユーザー体験を向上させられます。
- 効果測定: 広告の効果を正確に測定できます。
例
- あるECサイトで、過去に特定の商品を購入したユーザーに、その商品に関連する広告を配信する。
- ある旅行予約サイトで、過去の旅行履歴に基づいて、ユーザーに合った旅行先の広告を配信する。
- あるゲームアプリで、特定のレベルに到達したユーザーに、ゲーム内アイテムの広告を配信する。
DMPなどのオーディエンス(属性情報)を活用したオーディエンスターゲティング
DMPなどのオーディエンスデータを使ったオーディエンスターゲティングは、ユーザーの属性情報に基づいて広告配信を行う手法です。
DMP(Data Management Platform)とは、様々なソースから収集したオーディエンスデータを一元管理・分析し、広告配信などに活用するためのプラットフォームです。
仕組み
- データの収集: ウェブサイトのアクセスログ、顧客情報、アンケート結果、ソーシャルメディアデータなど、様々なソースからオーディエンスデータを収集します。
- データの統合・分析: DMPで収集したデータを統合・分析し、ユーザーの属性情報(年齢、性別、興味関心、ライフスタイルなど)を把握します。
- セグメントの作成: 分析結果に基づいて、ユーザーをグループ分け(セグメント化)します。例えば、「30代男性で、自動車に興味があるユーザー」といったセグメントを作成できます。
- ターゲティング広告の配信: 作成したセグメントに対して、最適な広告を配信します。
DMPで活用される主なオーディエンスデータ
- デモグラフィックデータ: 年齢、性別、職業、居住地など
- 興味関心データ: ウェブサイトの閲覧履歴、検索キーワード、購買履歴など
- 行動データ: アプリの利用状況、位置情報など
- サイコグラフィックデータ: ライフスタイル、価値観、性格など
メリット
- 精度の高いターゲティング: ユーザーの属性情報に基づいたターゲティングができるため、より relevant な広告を配信できます。
- 新規顧客の獲得: 潜在顧客を含む、より広範囲なユーザーに広告を配信できます。
- ブランド認知度向上: 特定の属性のユーザーに絞って広告配信することで、ブランド認知度向上を図れます。
例
- ある化粧品メーカーが、20代女性をターゲットに、新商品の広告を配信する。
- ある自動車メーカーが、SUVに興味があるユーザーに、新型SUVの広告を配信する。
- ある旅行会社が、海外旅行に興味があるユーザーに、海外旅行ツアーの広告を配信する。
注意点
- コスト: DMPの導入・運用にはコストがかかります。
- プライバシー: ユーザーのプライバシーに配慮し、適切なデータの取得と利用を行う必要があります。
- データの精度: 正確なデータに基づいてターゲティングを行う必要があります。
いずれの方法もプライバシー規制などの問題がある
第三者Cookie、ユーザーID、オーディエンスデータを使ったターゲティングは、いずれもプライバシー規制の強化という課題に直面しています。
世界的に、個人情報の保護に対する意識が高まり、GDPR(EU一般データ保護規則)や CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などの厳しいプライバシー規制が施行されています。
日本では改正個人情報保護法並びに改正電気通信事業法が施行され、個人情報の取り扱いに関する規制が強化されました。
これらの規制により、Cookieの利用や個人データの収集・利用には、ユーザーの同意を得ることが必須となり、従来のようなターゲティング手法は難しくなってきています。
具体的には、以下の点が問題となっています。
- 第三者Cookie規制: Google Chromeなどのブラウザが第三者Cookieの段階的な廃止を進めており、従来の行動履歴に基づいたターゲティングが困難になっています。
- ユーザーの同意取得: Cookieの利用や個人データの収集には、ユーザーの明示的な同意が必要となり、同意を得られない場合はターゲティングができません。
- データの匿名化: 個人を特定できないようにデータを匿名化する必要がありますが、匿名化されたデータではターゲティングの精度が低下する可能性があります。
これらの課題に対応するため、広告業界では、プライバシー保護とターゲティングの両立を目指した様々な取り組みが行われています。
コンテキストターゲティングとは
一般的にコンテクスチュアル(文脈)広告は、ウェブページのキーワードや画像などをAIで解析し、コンテンツの文脈に適した広告を配信する手法です。
日本ではGMO NIKKOのReeMo、世界ではGumGumが総力を挙げて研究・開発を
進めているターゲティング方法だ。
GumGumとは
中でもGumGumは、カルフォルニア州サンタモニカを拠点とするグローバルな、
コンテキスチュアルターゲッティグ(コンテキストターゲティング)を用いた最大手の
広告配信(DSP/PMP)です。
配信フォーマット
主に活用されるフォーマットはPMP(プライベートマーケットプレイス)で活用される、
スキン広告と呼ばれるフォーマットで表示単価は500円~1500円などとかなり高単価の
ブランド系案件を豊富に取り扱う。
コンテクスチュアルオーバーレイ広告:仕組みとメリット
従来のコンテクスチュアル広告との違い
コンテクスチュアルオーバーレイ広告は、従来のコンテクスチュアル広告の技術を応用し、動画コンテンツに特化した手法です。従来のコンテクスチュアル広告は、Webページのテキストや画像を解析して関連性の高い広告を表示していました。
一方、コンテクスチュアルオーバーレイ広告は、動画コンテンツの内容をAIが解析し、シーンや状況に合わせて最適な広告を動画内にオーバーレイ表示します。
具体的な仕組み
- 動画コンテンツの解析: AIが動画コンテンツの映像、音声、テキストなどを解析し、シーン、登場人物、背景、雰囲気などを理解します。
- 広告のマッチング: 解析結果に基づき、コンテンツの文脈に合った広告を自動的に選択します。
- オーバーレイ表示: 選択された広告は、動画内の適切なタイミングで自然な形でオーバーレイ表示されます。
メリット
広告主側のメリット
- 高い関連性: コンテンツと関連性の高い広告を表示することで、視聴者の興味関心を引き付け、広告効果を高めることができます。
- ブランドイメージの向上: コンテンツの文脈に合わせた自然な広告表示は、ブランドイメージを損なうことなく、むしろ好感度を高める可能性があります。
- 効果的なリーチ: 特定のシーンや状況に合わせた広告配信により、ターゲット層へ効果的にリーチすることができます。
媒体側のメリット
- 新たな収益源: 動画コンテンツに新たな広告枠を設けることで、収益増加に繋がります。
- ユーザーエクスペリエンスの向上: コンテンツの邪魔にならない自然な広告表示は、ユーザーの視聴体験を損なうことなく、むしろ向上させる可能性があります。
視聴者側のメリット
- 興味関心の高い広告: 自分にとって関連性の高い広告が表示されるため、有益な情報を得られる機会が増えます。
- 自然な視聴体験: 動画視聴を妨げない広告表示により、ストレスなくコンテンツを楽しむことができます。
ロケ番組とかバラエティーを見ていて誰もが一度はこう感じるはず、
「この場所に行ってみたいな・・・」
「安いプランがあればいいのに・・・」
ロケ地に関連するツアー扱っている旅行会社の
プロモーションを行うなど随所で広告を配信することで
双方に大きなメリットがあると言えます。
「コンテクスチュアルオーバーレイ広告」は広告業界の新たな風となるか?
近年、デジタル広告業界では、ユーザーのプライバシー保護意識の高まりや、従来のターゲティング広告に対する規制強化など、大きな変化が訪れています。そんな中、注目を集めているのが「コンテクスチュアルオーバーレイ広告」です。
コンテクスチュアルオーバーレイ広告とは、動画コンテンツの内容をAIがリアルタイムに解析し、文脈に合った広告を動画上にオーバーレイ表示する手法です。例えば、旅行番組でエッフェル塔が映し出された際に、旅行会社の広告を表示するといった具合です。
従来のディスプレイ広告枠の乱用や、AdSenseなどによるコンテンツと関連性の低い広告表示は、ユーザー体験を損ない、広告の市場価値を低下させてきました。一方、コンテクスチュアルオーバーレイ広告は、コンテンツと広告の関連性を高めることで、ユーザーに自然な形で広告を提示し、広告効果の向上とユーザー体験の両立を目指します。
この新たな広告手法は、以下の点で期待されています。
- 広告の質と価値の向上: コンテンツに関連性の高い広告を表示することで、ユーザーの興味関心を引き付け、広告効果を高めます。
- 不適切広告の抑制: コンテンツの内容をAIが解析するため、不適切な広告表示を抑制し、ブランドイメージの毀損を防ぎます。
- ターゲティング精度の改善: 従来のCookieなどに依存したターゲティングではなく、コンテンツの内容に基づいた精度の高いターゲティングを実現します。
しかし、コンテクスチュアルオーバーレイ広告は、まだ発展途上の技術であり、課題も存在します。例えば、AIによるコンテンツ解析の精度や、広告表示のタイミング、頻度などを最適化する必要があります。
今後、これらの課題が克服され、コンテクスチュアルオーバーレイ広告が普及すれば、ユーザー、広告主、そしてコンテンツ提供者の三方にとってメリットのある、新たな広告の形として、広告業界に新たな風を吹き込む可能性を秘めていると言えるでしょう。